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古材でしかできないこと

## はじめに
### 古材が注目される背景とは?
最近、「古材(こざい)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。昔の家屋や蔵、寺社などから取り出された木材が、今ふたたび住宅や店舗づくりに活用されているのです。なぜ、今あえて「古い木材」が注目されているのでしょうか?

背景にはいくつかの理由があります。一つは、SDGsの流れに代表される「環境への配慮」。使えるものを捨てずに活かすという考え方が、建築の世界にも広がっています。また、職人の手で加工された昔の木材には、今では手に入らないような立派な材や貴重な樹種が多く、価値が見直されています。

さらに、古材には「その土地の記憶」や「家族の歴史」が刻まれており、新しい建材では決して表現できない“時間の積み重ね”が感じられるのも魅力です。単なるリサイクルではない、文化的な価値がそこにあります。

### 新材にはない魅力とは何か?
新しく製材された木材は、真っすぐで美しく扱いやすい一方で、どこか無機質で画一的でもあります。それに対して古材は、色の深み、節の入り方、釘跡や日焼けの跡など、一つひとつが違う“顔”を持っています。

たとえば、天竜杉や古い民家の梁(はり)などは、100年、200年と風雪に耐え抜いたことによる独特の風合いを持ち、それを空間に使うことで、まるで歴史がそこに流れているかのような空気を生み出します。

また、古材は時間をかけて自然乾燥しているため、割れや反りが少なく、木材としての安定性が高いという機能的な面もあります。見た目の味わいだけでなく、実用性においても魅力が詰まっているのです。

このように、古材は単なる“古い材料”ではなく、新材では絶対に出せない「物語」や「風格」を持った特別な素材です。本記事では、「古材でしかできないこと」に焦点をあて、その可能性や魅力を深掘りしていきます。

## 1.古材が生み出す唯一無二の空間
### 歴史と風合いが醸し出す空気感
古材が使われている空間に足を踏み入れると、どこか懐かしく、ほっとするような雰囲気を感じることがあります。それは木材に染み込んだ時間や人の営みが、空間全体に穏やかな空気感をもたらしているからです。

たとえば、築100年の古民家から取り出された梁をカフェの天井に使った事例では、お客さんから「なんだか落ち着く」「この木を見ていると昔の家を思い出す」といった声が多く聞かれました。古材は、ただの建材ではなく、人の感情や記憶にも働きかける「空間の演出家」といえる存在です。

### 経年変化による味わい深さ
新しい木材は均一で清潔感がありますが、古材にはそれとはまったく異なる味わいがあります。長い年月の中で日光や風雨にさらされた結果、色合いは深まり、表面には自然な凹凸や傷が刻まれています。

特に人気があるのは、古い納屋や蔵から出た足場板や床材で、長年の使用によって生まれた摩耗や染みが「一点もの」の表情を作り出しています。新しい空間の中に、こうした古材をアクセントとして取り入れることで、空間全体に奥行きと温もりが加わるのです。

### リノベーションでの活用事例
最近では、住宅や店舗のリノベーションにおいて、意図的に古材を取り入れるケースが増えています。たとえば、マンションの一室をリノベーションする際に、天井の一部に古材の梁を使うだけで、空間に劇的な変化が生まれます。現代的なインテリアと組み合わせることで、古材の個性がより際立ち、唯一無二の空間が完成します。

また、飲食店やアパレルショップなどでは、古材のカウンターや什器が人気です。新品の什器では出せない風合いが「おしゃれ」「こだわりを感じる」と評判になり、ブランディングの一部としても機能しています。こうした使い方こそが、「古材でしかできないこと」の一つなのです。

## 2.古材ならではの機能性と強度
### 長年使われ続けた証=耐久性
古材は、何十年、あるいは百年以上の時を経てもなお使われ続けているという事実が、その耐久性を物語っています。もともと古民家や蔵などに使用されていた木材は、当時の職人が厳選し、手作業で加工したもの。丁寧な仕上げと良質な木材が、長い年月に耐えてきた理由です。

例えば、築120年の家を解体した際に出てきた杉の梁は、表面を軽く磨いただけでツヤがよみがえり、現代の住宅にそのまま再利用されました。長く使われていたからこそ「使えることが証明された木材」として、安心して取り入れることができるのです。

### 現代建材にはない材質の豊かさ
古材の多くは、現在では伐採が制限されている樹種や、山の奥深くで何十年もかけて成長した天然木からつくられています。そのため、密度が高く、木目も力強いものが多いのが特徴です。

例えば、ケヤキやヒノキ、栗といった木材は、今では入手困難になっているものもあり、古材として市場に出ると高い評価を受けます。こうした木材は、削ったときに香りがよみがえることもあり、視覚だけでなく五感にも訴える力があります。まさに「素材そのものの魅力」が現代建材にはない古材の強みです。

### 木の歪みや乾燥による安定性
新しい木材は時間とともに乾燥が進み、反りや割れといった変形が起こることがあります。しかし古材は、すでに長年かけて自然乾燥されており、木材としての状態が安定しています。

これは特に床材やカウンターなど、面積が広く、人が頻繁に触れる部分でその違いが実感できます。たとえば、古材を使ったキッチンカウンターは、施工後の変形が少なく、経年による不具合の心配も少ないため、施主からの満足度も高い傾向があります。

このように、古材は「古い=弱い」ではなく、「長い年月に耐えてきた=信頼できる」という観点で見直されているのです。

## 3.環境・文化・地域とのつながり
### 再利用による環境負荷の軽減
古材を使うことは、ただの「再利用」ではなく、環境負荷を減らす大きな手段でもあります。通常、木材を新たに調達するには木を伐採し、乾燥・加工といった工程を経るため、多くのエネルギーを消費します。一方、すでに役目を終えた建物から取り出した古材を使うことで、これらのエネルギー消費を大幅に減らすことができます。

例えば、解体された古民家の梁や柱をそのまま店舗の内装に使うと、新しい木材を使う場合に比べて、CO₂排出量が抑えられ、木の寿命をさらに延ばすことができます。これこそ、循環型社会に適した素材活用の好例です。

### 地元の歴史や物語の継承
古材には、単なる「木材」としての価値以上に、その土地や建物の“物語”が宿っています。たとえば、明治時代に建てられた家屋の床板には、何世代にもわたる家族の暮らしの跡が刻まれています。それを取り出して、別の家や店で再利用することで、目には見えない「物語」が次の場所へと受け継がれていきます。

ある地域では、取り壊された旧小学校の体育館の床材を地域の集会所に再利用し、そこに通っていた人たちが「懐かしい」と語り合う場になったという例もあります。古材は記憶をつなぎ、人と場所との絆を深める架け橋となるのです。

### 地域資源としての価値
古材は「資源」として地元で循環させることができます。特に地方では、空き家や古い建物が増加する一方で、それを活かす仕組みが整っていないことが課題となっています。そんな中で、地元で出た古材を地域内で活用する取り組みが注目されています。

たとえば、浜松市の山間部で解体された古民家の梁を、市内のカフェや家具職人が仕入れ、再利用するという地域連携の仕組みが生まれています。このような流れが定着すれば、地域経済の活性化にもつながり、古材は「廃材」ではなく「地元の宝」として価値を発揮するようになります。

## まとめ
古材には、新材ではけっして再現できない魅力と価値が詰まっています。長い年月をかけて育まれた風合いや味わいは、空間に深みを与え、訪れる人に安心感やぬくもりを与えてくれます。さらに、強度や安定性といった機能面でも、しっかりとした信頼性があり、リノベーションや新しい空間づくりに取り入れるには十分すぎる素材です。

また、古材を活用することは、単なるリサイクルにとどまらず、環境への配慮や地域とのつながり、さらには記憶の継承という意味でも、大きな意義を持っています。使い方によっては、古材は地域を支え、文化を守る「資源」としての役割を果たすのです。

「古材でしかできないこと」はたくさんあります。それは単なるモノづくりではなく、時間や記憶、地域とのつながりまでをも含めた価値の再構築です。これからのものづくりや暮らしの中で、古材という選択肢がもっと広がっていくことを願っています。

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